活用レポート 小山剛さん

活用レポート 小山剛さん

まちタネ広場のプレイスメイキング社会実験当日、「創造する遊び場」を仕掛けた小山剛さん。その後も様々なイベントの企画運営をして、子どもの居場所づくりを実践。

―創造する遊び場をやってみようと思ったきっかけは何ですか?

小山さん 最近の子ども達の遊び方を見るとインドア気味になっていると感じます。スマホ、テレビ、ゲーム等のインドアの遊びが多く、外で遊ぶ光景をあまり見なくなりました。私の子どもは現在小学3年生になりますが、ややインドア気味だなと感じており、もっと外で身体を使って遊んでほしいなと思っていました。

事務局 まちタネ広場のお話を聞いたときはどのように思いましたか?

小山さん 遊具を置かないただの広場と聞いて、とても良いなと思いました。というのは、何もない分、子どもたちが自主的に遊びを考えると思ったからです。ドラえもんに登場する空き地を連想しました。「今日はここで何して遊ぼうか」、自然と子どもが集まり、遊び始める場所、そんな場所にしたいなという想いがありました。まちタネ広場がオープンするタイミングで、何かそのきっかけになる仕掛けをつくりたくて、大きな柿の木に縄をつるしたターザンや木の棒、古タイヤや大量の石といった、遊びの素材となりそうな原始的な道具だけを用意しました。子どもは教えなくても勝手に遊び始めるはず、大人よりも何倍もクリエイティブであってほしいと思いながら、実際はどうなるか、現代っ子には見向きもされないのではないかと心配もしていました。事前に試作品を用意して、私の子どもがどう反応するか見ていると、何も言わなくても勝手に遊び始めてくれたので、少し安心しました。

第1回ワークショップの様子@小諸駅のまど
第2回ワークショップの様子@市役所
事前に試作品の道具で遊ぶ小山さんの子どもたち(小山さん提供)

事務局  まちタネ広場がオープンした当日はたくさんの子どもが遊ぶ景色が見られましたね。

小山さん 社会実験当日はたくさんの子ども達が遊んでいる姿を見ることができました。子どもが元気に遊び回っている光景はあらためて良いなと感じました。その後も、まちタネ広場の様々なイベントで遊び道具を使ってもらえて良かったなと感じている一方で、アップデートできていないのが残念です。もっといろいろと子どもと一緒に遊びたいことは沢山あるので、そろそろ新しいことを試そうと思います。

社会実験当日の様子①
社会実験当日の様子②

事務局  今もまちタネ広場でイベントがある時に、遊び道具を出すと子どもたちが遊んで、子どもの居場所ができます。子どもが暇をしないので、親子で長居してくれています。

小山さん まちタネ広場は、子ども同士、また知らないお兄ちゃんお姉ちゃんと仲良くなるので、貴重な場だと思います。公園の遊具で遊ぶのも楽しいですが、最近は〇〇してはいけないという禁止のルールも多くてやや窮屈に感じることもあるかと思います。遊び方が規定された枠組みの中でルールを守って遊ぶという学習も大事ですが、まちタネ広場のように何もない場所、子どもにとっては一見退屈そうな場所でも、石や缶、紐ひとつでできる遊びなど、新しい発想でその空間、時間をどう楽しく過ごすか、遊びを考える能力を養うことも大事なのではないかと思います。どこか昭和っぽさ、古くて新しい感覚を味わって欲しいなと思います。まちタネ広場は、想像を刺激してくれる場所です。受け身でいては、おそらく退屈してしまいます。私の3歳の子どもは、まちタネ広場をグラウンドのように使っています。「よーい、ドン!」と言うと、走り出し1周回ってきます。新記録が出るのが楽しいようで毎回タイムを計るように指示されます。普段、家では動きたがらないのに不思議とまちタネ広場では何周も全力疾走します。まちタネ広場は、ただの広場、何もないのが強みだと思います。誰でも多目的につかえる万能な空間だと感じています。ここまで、様々な使い方がしかもこんなにも頻度高く利用されることは想定していたのですか?

(小山さん提供)

事務局  社会実験として、あまりルールを定めずに色々な方に活用してもらいたいと思っていましたが、ここまで活用していだだけるとは想定していませんでした。

小山さん まちタネ広場は、普通の公園のルールに対して、自分たちの責任で自由に使えるので、進んだ取組だと思います。自由に使わせてもらう分、近隣の方、行政の方に迷惑がかからないように一層注意する意識もはたらきます。この広場はもっと注目されて良いと思うので、是非PR頑張ってほしいです(笑)。新型コロナウイルスの影響で都市部の公園では一時期遊具が使えないことがあったので、まちタネ広場は時代にも合っているのではないかと思います。ステイホームが続いたコロナ禍では、仕事も買い物も遊びも全てが自宅で済むようになりました。遊びも同様に、スマホ、オンラインで映画もゲームも音楽も一生かけても消費しきれないコンテンツで溢れています。ものすごく便利なのですが、正直どこか疲れた感じ、物足りない感じはないでしょうか。何にもない広場で、何にもないところから、遊びもイベントもつくる。ゼロから企画してやってみる、自分たちで創り上げる感覚、その過程が楽しいのかなと思います。本業の仕事もありますが、それとは別に地元の方や農家の方、東京の方等、オンラインで打合せしながら、一緒に作り上げていくのが私自身のライフワークとしてとても楽しく、充実しています。そういう感覚が今の小諸の人にはあるので、これだけまちタネ広場が稼働し、愛されつつあるのだと思います。

事務局  広場を使う方の趣味嗜好がバラバラでしたけど、それを受け止めるだけの場はあったのかなと思います。

小山さん あと、まちタネ広場は利用ルールをあえて決めないというのが効いていると思います。小諸市としては不安な面もあるかと思いますが、ルールがないからこそ利用者側の意識も高まります。「まちタネ広場では何でもチャレンジください!」の声に応えたいなと思います。

事務局  広場の使い方を利用者の方にお任せしている部分は大きかった気がします。

小山さん 小諸市の市長の決断も大きいと思います。コロナ禍で多くのイベントが中止になるにも関わらず、まちタネ広場のイベントが実施できたことは良かったです。イベントには市長もよく顔を出してくださいますが、それもみんなの励みにもなっているかと思います。(小諸は色々なところで市長を見かけるので、市長率が高いと言われています)

―小山さんにとって小諸に関して今後の展望がありましたら教えてください。

小山さん 既にそうなりつつあると思いますが、まちタネ広場がきっかけで小諸の関係人口、あそこで何かがあるから小諸に来たという方が確実に増えたと思います。「ASAMAYA MARCHE」もそうですし、他のイベントもそうだと思います。信州プロレスは最も印象に残っています。最高に楽しませてもらいました。数年前までは、小諸の人は軽井沢、佐久、上田あたりに出かけることが多く、周辺の方が小諸に来るということはそう多くなかったのではないかと思います。あるとすれば、懐古園の桜と紅葉の時期くらい。それがこのところ小諸でイベントがあるから行ってみようという、新しい人の動きが出てきていると思います。まちタネ広場が小諸の窓口の機能を果たしていて、イベントを通して、新しいつながりができています。人が人を呼び、新しいことが生まれる場所になっているように思います。

(小山さん提供)

事務局  他にも変化はありましたか?

小山さん 地元の小諸商工会議所青年部の方々とも知り合えるきっかけになりましたし、最近移住して新しいお店をはじめられた方や移住された方、また移住しようか検討されている方とも知り合うことができました。とても心強い地域おこし協力隊の方も続々と加わり、どんどん小諸に個性的な人が集まってきているなと感じます。そしてそれ以上に個性的なのが小諸の地元の方です。外の視点と元々小諸が持っている良さが融合して、どんどん輪が広がり、新しい取り組みができていくのがとてもおもしろいですし、これからますます期待したいところです。まちタネ広場が磁場になっていてどんどん巻き込まれて、輪が広がっているような感覚です。

事務局  最近だと、2022年10月8日(土)、9日(日)にこれまで上田市で開催されていた有名なイベント「Loppis」がまちタネ広場に来ますね。

当日のLoppis Komoroの様子①(小山さん提供)

小山さん そうですね。まさか小諸でというのが正直な感想です(笑)。他にも、おしゃれ田舎プロジェクトの活動もまちタネ広場の機能と相乗効果を果たしているようにも思います。

小山さん 私は、コロナ禍前までは週5で東京に新幹線で通勤していましたが、このところはリモートワークの割合が増え、小諸で過ごす時間が増えました。移住して間もなく10年になりますが、これまでは東京にいる時間と小諸にいる時間は半々でやや東京の方が多い時もありました。コロナ禍をきっかけに小諸での活動が一気に広がりました。時間ができ、イベントの運営にも関われるようになりましたし、新たな出会いもとっても増えました。そしてこのところ、イベントなどを機に関東圏から小諸に通う方が増え、2拠点居住、移住にもつながっています。どなたかが小諸の「周回遅れの大逆襲が始まった」とコメントされていましたが、まさにそのような感覚です。一時は活気が失われた時代もあったのかもしれませんが、このところはなぜ小諸に?というほど人が集まり、活気が出てきています。

事務局  最近は、年配の方からも広場に子どもたちが楽しそうに遊んでいる姿を見かけるので良かったと言って頂けました。

小山さん まちタネ広場がきっかけで確かに日常的に活気を感じられるようになりました。ただ、この流れを一過性のものにしてはいけないと感じています。まちタネ広場きっかけで小諸に足を運んでくれた方に、市内のお店やスポットに興味をもってもらい、足を運んでもらう取り組みが大切なように思います。電気自動車のeggはそれを象徴するような楽しい乗り物です。小諸が好きで小諸愛溢れる人が本当に多いです。みんなで協力、連携して小諸ファンがどんどん増えていくと良いなと思います。これから大きくは人口が減少していきます。人口4万人の小諸市はなぜこんなに賑わっているのか、今以上に注目される存在になれると良いなと思います。様々な社会課題がある中で、小諸の取り組みはユニークでおもしろい。何よりみんな楽しそうだ。この楽しむということがこの時代とても大事なように思います。小諸の人、関わりのある人、自分の周りの人はみんな楽しそうです。それが最大の強みだと思います。そのポテンシャルがまちタネ広場も含め、様々なところで形になってきているのかなと思います。

当日のLoppis Komoro②の様子(小山さん提供)

事務局  元々まちタネ広場は、まちのスタートアップの場の位置づけもっているので、引き続き、みなさんにフル活用してほしいです。

小山さん 小諸にまちタネ広場があることでみんなの何かやりたいという発想力や行動力に火がつき、いまの動きがあると思います。そんな大人の姿をみて育った子どもたちも、きっと自分で何かをやりたいという発想力や行動力を養ってくれるのではないかなと心の中で思っています。子どもによる子どものためのミニマルシェみたいな企画があっても面白いかもしれませんね。長くなりましたが、関係者のみなさま、小諸にまちタネ広場をつくっていただき、ありがとうございます。そして引き続き、よろしくお願いします。